愛のない部屋
「ただ治してやろうと思って」
「治す?」
「おまえが他人とスキンシップとれるようにさ、手助けしてやるよ」
お湯が沸き、素早く麺を投入する。
「余計なお世話だから」
「ずっとこのまま、人を避けるわけ?」
「私に絶対、触らないで」
「はぁ?」
「あんたには関係ないことでしょう。他人に触れられなくないと思うことが、そんなにいけないの?」
誰にも迷惑掛けてないのに。責められる筋合いはない。
「いけないとか、そういうことじゃなくてさ……なんていうか、うん……、」
歯切れが悪い。
「悪い。なんだかんだ理由をつけて、俺がおまえに近付きたいだけかも」
――近付きたい?
峰岸が、私に??
「あんた、自分がなに言ってるか分かってるの?欲求不満なら他所で処理してよ」
そんなことに、巻き込まないで。
「……違げぇよ」
吐き捨てるように呟いた峰岸は、髪をわしゃわしゃとかき混ぜた。
せっかくのセットが乱れるのに。
「前に言ったよな?身体から始まった関係に幸せなんて、こないって。だから俺は慎重に順を運ぶよ。もちろん好き、というところから」
今日の峰岸は、いつも以上に真剣だった。