愛のない部屋
峰岸の言葉を聞こえないフリをして、味見する。
手を動かしていないと落ち着かない。
「ちゃんと想いを伝えるとこから始めるからさ。おまえが嫌がることはしない」
「当然でしょ」
今日の峰岸は少し変なのに、
何故かいつもより近くに感じた。
「テーブル拭いといて」
「了解」
布巾を渡す。
「あ~やっぱ、味噌が良かった」
そう嫌みをこちらに聞こえるように言う。
「アンタが塩にしよう、って言ったんでしょ。過ぎたことをグズグズ言うな!」
「へぃへぃ」
重い話は、やっぱり私たちには似合わない。