愛のない部屋
――美味い、
そう言って熱いラーメンをすする峰岸と、向き合うかたちでテーブルに座る。
「明日の夕飯は餃子と炒飯にします」
支払いを峰岸負担にしてしまったのだから、作らないわけにはいかない。
「楽しみにしておくよ。明日は昼に滝沢さんが来るって」
「本当?」
箸を止めて聞き返す。
「うん」
久々にタキが来るのか。
最近仕事が忙しいのか、なかなか会う機会がなかった。
「おまえ、滝沢さんの話となるとさ。すげぇ嬉しそう」
自然と顔が綻んでいたようだ。
「嬉しいもん」
「…妬けるな」
「アンタに妬いて貰うギリはないわ」
「可愛くねぇ女」
「可愛くなくて結構」
タキが来るのなら昼食も腕を振るおう。今日、食材たくさん買って来て良かった。
「昼にタキと電話したのね」
「ふぅん」
「婚約者さん手作りのお弁当を食べてて、幸せそうだったよ」
「そっか」
「タキはいつも周りの幸せばかりを願っている人だったからさ。やっとタキ本人が幸せになれて、ほっとしてる」
数ヶ月前はタキがアメリカに行ってしまうことが悲しかったけれど、もう今はちゃんと笑顔で送り出せる。
その理由のひとつに、
峰岸が傍にいてくれるから、なんていつか伝えられればいいね。