愛のない部屋
「俺も滝沢さんには迷惑ばかり掛けてたから、あの人が自分の幸せを見つけて良かった、と思うけど」
でもさ、と峰岸は続ける。
「俺たちの世話をやくのも、滝沢さんにとっては面倒なことじゃなくて。幸せのひとつだったと、言ってたぞ」
「タキらしいね」
私たちを繋いでくれたタキ。
感謝の言葉はいくらあっても足りない。
「峰岸はタキと仕事関係で知り合ったんでしょ?昼間、聞いたよ」
「ああ」
「私は街中で泣き叫んでいるところを、タキに救われたの」
「泣き叫ぶ?」
興味津々の峰岸はラーメンを既に完食したようだ。
待って?早くない??
「死んでやる~殺してやる~!って騒いでたの。通りすがりの人たちは、みんな知らん顔。当然の反応だと思うけど」
『怖い女』
そんな反応が返ってくると思ったのに。
それかからかい口調で過去をけなされるかと思ったのに。
「死にたいと、本気で思ったの?」
真っ直ぐな瞳に問われた。