愛のない部屋
あまり誰かに話したい話題ではないけれど、口を開く。
「死にたいと思ってたけど。同時に殺してやりたい程、憎い人間のために、自分が死ぬなんて馬鹿馬鹿しいと思った。結局、死ぬ勇気なんてなかったんだよね」
「良かった、」
峰岸は笑うと、席を立った。
「おまえが死ななくて、今ここにいて――良かった」
背を向けていて、峰岸の表情は見えない。
「おまえがいなかったら、一緒にラーメン食べることもなかっただろうし、喧嘩相手がいなくなるのは寂しい」
おまえが
生きていて、良かった。
私なんかにそう言ってくれるの?
「ありがとう」
「俺はなにもしてないだろう?おまえを助けたのは、滝沢さんだ……でもこれからは、」
峰岸は冷蔵庫からビールを取り出すと、1本を私の前に置いた。
「これからは俺も力になるから。死にたいなんて、絶対に思うなよ」
心に響く。
峰岸の言葉が、心に真っ直ぐ届いた。
「ありがとう」
出されたビールを受け取り、峰岸が持つ缶に近付ける。
お互いに「乾杯」と言って笑い合った。