愛のない部屋
しばらくすると我に返ったように、真剣な表情で手紙を読み出した。
そんな峰岸を見ていられなくて、私は黙って席を立つ。食器でも洗おう。
何故、見ていられないのか…自分でも不思議だ。
峰岸と深い関係にない私が心配する必要なんてないのに。一緒に住んでいると情が移るものなのか…。
――と、
そんなことを考えていると
手からするりとお皿が離れた。
「あ……、」
声に出した時にはもう遅い。
勢いよく皿は、
床に落下した。
とても良い音が響いて、慌ててしゃがみこむ。
「大丈夫か?」
「あ、うん。騒がしくてごめん」
峰岸はキッチンまで来ると、私の腕を引いた。
「危ないだろうが。俺が片付ける」
自分が仕出かしたことの後始末くらいできるのに、峰岸がさっさと破片を拾っていく。
「ごめんね。大切にしてたお皿だった?」
破片の処理が終わった峰岸にまずは皿を割ってしまったことへの謝罪。
「別に良いよ」
「弁償するよ。どこで売ってた?」
同じものはなくても、似たようなものならあるかもしれない。
「安物だから気を遣う必要はない。それより怪我がなくて良かった」
ほっとした表情を見せる峰岸に私はなにも言えなかった。