世界で一番似ている赤色



離婚が決まってから、夜な夜なお母さんとお父さんは話し合いをしていた。



1回、リビングをのぞき、その様子を見たことがある。


優にぃが寝ている夜中。こっそりトイレに行った時だった。



養育費がどうとか、面会の機会をどうするか、とか。


お母さんが金銭的に自立できるまで続けるだとか。



当時は理解できなかったけれど、後々になって意味が分かった。



離婚してからも、定期的にお父さんと優にぃと会う機会はあった。


小5の頃、これが最後と言われ、終了した。


これは完全にお母さんとお父さんの関係が切れたことを表していたんだ。



息をのみながら、2人の会話を盗み聞きした。



『お金のことを考えると、本当は綾だけで精一杯よ。優は必要ない』


『そんな言い方するなよ。2人とも大切な子どもだろ?』


『なによそれ、私に説教するの? もともとはあなたも悪いでしょ? 私が営業トップになってこれからって時だったのに、優ができたせいで慌てて結婚……』



その時――



ガタッ。わたしと優にぃの部屋のドアの音がした。


一瞬、お母さんとお父さんが反応したけれど、その後なんの動きもなかったのか、2人だけの会話に戻った。



――優は必要ない。



きっと、優にぃはあの話し合いを聞いてしまったんだ。


本人は気づいていないかもしれないけれど、『必要とされている・されていない』について優にぃはとても敏感だから。

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