世界で一番似ている赤色
「で。どう返事するの? 川瀬くんに」
「好きかって言われるとわかんない。友達としてはいいんだけど」
「へーそっか。でも川瀬くんいい人じゃん! ちょっと背低いけど」
非常階段から駅前のカフェに移動し、引き続き朱里ちゃんと恋バナ中。
朱里ちゃんは相変わらず年上彼氏とラブラブ。
なのに、わたしとの時間も大切にしてくれる。
『だって思いっきり恋バナできるの綾ちゃんだけだもん』
いつかさりげなく言われた言葉は、わたしを嬉しい気持ちにさせた。
わたしがそうであるように、彼女もまたわたしを信頼して、心を開いてくれていることを実感できたから。
朱里ちゃんは『これ、絶対に秘密ね』と約束した話は絶対に口外しないし、自分の話をした分、わたしの話も聞いてくれる。たまに尋問みたいになるけれど。
朱里ちゃんは優にぃの正体を知らない。
だからこそわたしも、どこに行ったとか、誕生日に何をもらったとか、彼との出来事を純粋な恋バナとして打ち明けることができた。
朱里ちゃんはズズッとココアをすすり、
「綾ちゃん……幼なじみのお兄ちゃんのこと、まだ忘れられない?」
と小声で言い、わたしをチラっと見た。
去年、優にぃと離れる時、わたしは彼への気持ちを心の底に封じ込めた。
同時に、恋する気持ちにも一緒にフタをしてしまったようで、新しい恋に踏み出せないでいた。