世界で一番似ている赤色
2
☆
「綾ちゃん、帰ろ」
「あれ。川瀬くん、部活は?」
「今日月曜だよ。俺、部活休みの日」
「あ、そっか。ごめんごめん」
やっと肩までつくかつかないかまで伸びた髪をいじり、川瀬くんに苦笑いを浮かべた。
川瀬くんもまた頭をかき、軽くため息をついた。
危ない、またやっちゃうとこだった。
川瀬くんと付き合って1ヶ月。
彼の部活が休みである月曜は、週に1回の放課後デートをする約束だ。
先週、間違えて放課後すぐ帰ってしまい、彼を悲しませてしまった。
川瀬くんにとっては、月曜があるから部活苦しくても頑張れる! というくらい楽しみな日らしいのに。
コンビニに寄ってから、川沿いの公園へ。
短い緑が生い茂る土手に、体1つ分の距離をあけて座る。
ここで日が暮れるまでお話しすることが定番になっていた。
「今度、休みの日どっか行こうよ」
「いいよ。どこがいい?」
「綾ちゃんは?」
「んーどこでもいいよ。川瀬くんは行きたいとこある?」
スティックタイプのチーズケーキの袋を開けながら、彼にそう聞く。
今日はずっと太陽が雲に隠れている。
景色は色を変えないまま暗くなるだけだろう。
わたしはチーズケーキをかじり、輝きの少ない川を眺め、彼からの言葉を待った。
「思い切って夢の国とか行っちゃう?」
川瀬くんはそう言い、軽くうねった髪を風になびかせ、わたしを見つめた。
ぽろりとケーキのかけらがスカートに落ちた。