世界で一番似ている赤色


「えっ、人いっぱいだよ? 並ぶよ? 高いよ?」


「ほら。1ヶ月記念じゃん。俺ら」



そっか。もう1ヶ月経ったのか。まだ2週間くらいだと思っていた。



川瀬くんは記念日とか大切にするタイプなんだ。


まあ予想通りかも。


部活忙しいのに宿題は忘れないし、成績も学年トップクラス。


ラインも電話もまめで、おはようとおやすみは毎日欠かさない。


わたしが言えなくても、彼からいっぱい好きって言ってくれる。



……嬉しいんだけど、時々息苦しくなるのはなぜだろう。


彼からの気持ちに、自分が全然応えられている気がしないから、かな。



一応、好き、だとは思うけれど。


あの時ほど、夢中にはなれない。


自分が止められないほどに気持ちがあふれることはない。



だからこそ、なるべく彼の希望にあわせてあげたい。


自分でこうしたい、という思いがわいてこないのもあるけれど。



「そうだね。他に思いつかないし、行っちゃおうか、夢の国!」



そう伝えると、「お、おう!」と川瀬くんは驚いた顔になる。


嬉しさを隠しきれていない様子で。


くすっと笑いをこぼすと、彼はおしり1こ分、わたしに近づいた。


肩のあたりが触れ合う。


ドキッ、というより、ビクッと心が震えた。


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