世界で一番似ている赤色
座席はいっぱいだったため、扉近くに2人で立つ。
大和くんはドカッと床に部活用のカバンを置き、「川瀬となんかあった?」と聞いてきた。ぎくっ。
「なんもなんも!」
「あいつ、いちいち俺に報告してきてウザい」
「報告って、何を?」
「お前とどこ行ったとか、どんなラインしたとか。あと、今日こそキスするとか」
「えええええ!」
思わず大声を出してしまい、ぱっと口元をおさえた。
だって、なにそれ。めちゃくちゃ恥ずかしいんですけどー!
「俺が綾のこと好きって思ってるみたいで、超ライバル視してくる」
「はぁ……」
「まあ、俺……実は中学の時、お前のこと好きだったけど」
「えええええ……ふがっ!」
再び大声を出しそうになり、彼に口をふさがれる。
突然のカミングアウトに鼓動がバクバクと激しくなる。
急に言わないでよ! 場所考えてよ!
大和くんはわたしの口を片手でふさいだまま続けた。
「今はなんていうか、付き合い長いし、お前意外と面白いし、彼氏もいるし、その……」
「ふがががが」
「こんなこと言ったらあれかもしんないけど、妹みたいな感じっていうか」
ここまで言って、ようやく手を離してくれた。
大和くんは気まずそうに窓の外を眺めた。
暗めの風景の奥、遠くに見える高層マンションがキラキラと光を放っている。
妹みたい、という言葉に心が反応してしまった。
「わたし今はもうお姉ちゃんだよ」
自嘲気味に笑いながら、彼にそう伝えた。