世界で一番似ている赤色
大和くんは1つ目、2つ目、3つ目、全部の苗字のわたしと時間を過ごしている。
わたしと優にぃが兄妹だった頃も知っている。
「…………」
じっと大和くんはわたしを見つめている。
負けずにわたしもにらむように見つめ返した。
「うーん、綾がお姉ちゃんって、俺には全然そう見えない」
大和くんは首をかしげてから、視線を外した。
「ひど!」と言い、ばしりと肩を叩く。「いてっ」と彼から声が漏れる。
再び大和くんは窓の外を眺めた。
電車が橋にさしかかり、ガタンと大きく揺れた。
「お前が昔、兄貴にべったりだったの見てたから。その印象強いし」
ドアの窓に、大和くんの表情が写っている。
遠くを眺めるその顔は大人っぽくて、昔わたしをいじめていた頃の面影はなくなっていた。
「…………」
わたしが黙りこんだことに気まずさを感じたのか、彼ははっとした顔になり「あ、悪い」と謝ってくる。
「もう何年も経ったし、別にいいよ」と返しておいた。