世界で一番似ている赤色
☆
家に帰ると家族3人ともそろっていた。
お母さんには遅くなると連絡しておいたから、大丈夫。
「ただいま」
「お帰り、ごはんできてるよ」
今日の晩ご飯はお母さん特製のチャーシュー丼。
カバンを床に置き、わたしも食卓に座った。
家族3人に向かって「いただきます」と伝えると、
「で、どんな男の子なんだ? 川瀬くんとやらは」
早くも豊さんから質問が飛んできた。
「いい人だよ。頭いいし、かっこいいし、運動神経いいし、優しいし」
ビール片手に不機嫌な顔をしている豊さんに、あえてそう自慢した後、
「お父さんも昔、そんな感じだったんじゃない?」
と一言加えた。
すると、豊さんはブホッとビールを吹き出した。
もともと「彼氏はまだ早い!」と豊さんは反対していたが、無事、ご機嫌取りに成功。
「そうよ。南中の元生徒会長で、いいとこの息子さんだって。成績も学年トップなんだとか。綾、すごい人つかまえたのよ」
ちなみにお母さんは川瀬くんとの交際に賛成派。
付き合い始めた頃、思い切って彼氏ができたことをお母さんに伝えた。
どんな子なの? と聞かれ、川瀬くんのプロフィールを伝えたとたん上機嫌になり、よかったわね、と喜んでくれた。
おかげで月曜のデートも反対されていない。
むしろ、青春でいいわね~と言ってくれる。
「いーなー澄花も彼氏ほしい」
「澄花はまだ早いぞ!」
「だって女子校出会いなさすぎー」
「学校は男と会うために行くものじゃないだろ?」
中2になった澄花ちゃんと豊さんの言い合いに笑いながら、わたしもご飯を食べた。