世界で一番似ている赤色
今の家族になって1年以上が過ぎた。
お母さんは仕事と家庭の両立を頑張っていて、豊さんはたくさんお金を稼ぎながら家族を支え、澄花ちゃんは持ち前の明るさで家族を明るくしてくれる。
全員が1人ずつとしか血がつながっていないという複雑な環境なのに、とても仲のいい家族。
「そうだ。家族旅行なんだけど、綾は月末の3連休、予定ある?」
お母さんは豊さんにビールを継ぎながら、わたしに笑顔を向けた。
「えー。わたし、文化祭の準備あるんだよね」
「とか言って、川瀬くんとやらとデートする気じゃないのか?」
ギロリと豊さんににらまれ、
「澄花ちゃん、彼氏できてもお父さんに言わない方がいいよ」
とこそっと澄花ちゃんに耳打ちする。
「わかった! お姉ちゃんアドバイスありがとう」
「なんだとー! お父さんは心配なんだぞ!」
「ほら、ビールでも飲んで落ち着いて」
わいわいと再び家族が騒ぎ出す。
そんな中、わたしは一足早く食事を終え、流しに食器を戻した。
「わたしもしかしたら演劇部に手伝いで入るかもしれないし、週末は忙しくなる。旅行、3人で行ってきなよ」
そう伝え、自分の部屋へと向かった。
「はぁ……」
制服のまま、ベッドにばたんと倒れ込む。
家族との時間は楽しいのだけれど、自分の部屋にいる時が一番好きだ。