世界で一番似ている赤色
顔を左右に振ってから、川瀬くんの隣へ戻った。
すると、「綾ちゃん、手、つなご」と声をかけられた。
「え!? ……あ、うん」
デートだし、手くらいなら大丈夫かな。
そう思い頷くと、すぐ右手を強く握られた。
「…………」
川瀬くんは緊張した様子でわたしを引っ張っていく。
なんか痛い。歩きづらい。
あれ。手をつなぐって、こんな感じだったっけ。
優にぃと一緒にいる時と違う。
つながっているのが自然、というような感覚がない。
温度が混ざり合う感じがしない。
しかも手汗がすごい。
まさかこれわたし? それとも川瀬くん? と心配になってしまうほど。
「ご飯どうしよっか」
「んーどうしよう。川瀬くん食べたいのある?」
「そうだなぁ。綾ちゃんは?」
「え。わたし? うーん」
フロア案内のレストランガイドを見ながら、2人で悩み続ける。
ぐ~とお腹が鳴っているのに、なかなか決まらない。
川瀬くんとでは、一緒に行きたいところ、食べたいもの、やりたいことがあまり浮かんでこないんだよな。
何がいいというより、別になんでもいい。みたいな感じ。