世界で一番似ている赤色
そういえば。前に優にぃと来た時は、3階のお店でハンバーガーを食べたな。
『おなかすいたー。焼肉食べたい』
『昼に焼肉とか無理』
『じゃあハンバーガー』
『はいはい』
食べてる途中で野菜がボロボロ落ちてきて、笑われて。
なぜかパンの部分だけ先に食べ終わり、お肉だけ残っちゃって、それを優にぃに取られそうになって。
彼の口元についていたケチャップをわたしが取ってあげて。ありがとうって微笑んでくれて。
ドキドキを紛らわすために変顔やったら怒られて……。
――え。
「とりあえずフードコート行こっか」
川瀬くんに手を引かれたものの、足は動かない。
「……っ!」
何にとりつかれたように、全ての神経がある方向にひきつけられる。
10メートルほど先に、見覚えのある黒いリュックが見えたから。
背負っているのは、高校生くらいの男の子。
どくんと心臓が震える。体に電気みたいなものが走る。
背の高さ、服装、面影……あの男子は……!
「綾ちゃん?」
「……離してっ!」
手が強くつながれているため、腕がぴんと張った。
ぶんと手を動かし、無理やり振り切った。