世界で一番似ている赤色
休日のショッピングモールは人が多すぎる。
駆けだした瞬間、子どもにぶつかりそうになり、急いで避けた。
体を斜めにして、人込みをすり抜ける。
「危ない!」「何なの?」
みんな邪魔。
どうしてまっすぐ進ませてくれないの? 見失っちゃう!
「キャーッ!」
ベビーカーにぶつかりそうになり、さすがに足を止めた。
「ゆう……!」
「綾ちゃん!」
大声で名前を呼ぼうとした瞬間、後ろから肩を掴まれた。
振り返ると、慌てた様子の川瀬くんがいた。
「はぁ、はぁ」
赤ちゃんの泣き声が聞こえる。
まわりにいた人たちがざわついている。
我に返ったわたしは「すみません!」と謝り、その場を離れた。
わたし、何しているんだろう。
急に走り出しちゃって。みんなにも迷惑かけちゃって。
優にぃがここにいるわけがないのに。彼は遠い国にいるんだから。
優にぃとのことを思い出したから、幻を見ちゃっただけだ。きっと。
今、わたしは川瀬くんといるのに。最低だ。