世界で一番似ている赤色
彼は1回振り返った後、次の路地を右へ曲がった。
わたしも荷物を投げ捨て、ドタバタと運動不足の体を必死に走らせた。
「待ってよぉ!」
ようやく次の路地へとたどり着いた。
カップルや若者たちをよけ、小走りでわたしも右へ曲がろうとしたが……。
「キャッ!」
ちょうど逆方向から歩いてきた若者グループの1人と右肩がぶつかってしまい、その勢いで道路に転んでしまった。
スカート越しに、ふくらはぎがアスファルトとこすれ合う。
鋭い痛みが体を襲った。
「いって! あぶねーだろ!」
「す、すみません!」
肩で息をしながら、必死に謝った。
優にぃを見失ってしまう。追いかけなきゃ。立ち上がらなきゃ。
気持ちだけは強く持っているのに、体が言うことをきかない。
「てか大丈夫? 泣いてるじゃん」
「高校生? かわいい~」
腰を抜かした状態のまま、その若者グループに絡まれる。
やだ、優にぃがいなくなっちゃう!
「ほら。よいしょーっ」
1人が後ろにまわり、わたしの脇を持ち、すくいあげるように立ち上がらせた。
「大丈夫です! 離してください! ……痛っ!」
触られている部分が気持ち悪い。
振りほどこうと体をひねったが、足に痛みを感じ、体が震えた。
もうダメだ。これじゃ追いつけない。せっかく優にぃを見つけたのに。
涙があふれ出してくる。
「うぉ~なんか興奮してきた」「お前泣かしてんじゃねーよ!」
わたしの様子を見て、若者グループは更に騒ぎ出した。