世界で一番似ている赤色
「というわけで、お兄さんたちと遊ぼうか」
「嫌!」
必死に体を振りほどく。やっと男の体が離れた。
「いいじゃん。どうせ男にフラれたとかでしょ? ここに新しい出会いあるかもよ~?」
「キャッ!」
腕をつかまれ、近くの居酒屋へと連れて行かれそうになる。
足をバタバタしても、男の人の力には適わない。
やだ、そんなことしてるヒマない! 離して!
「……綾!」
あれ、優にぃの声が聞こえる。わたし、夢でも見てるのかなぁ。
「すみません、連れなんで返してください」
懐かしい声が男たちの奥からはっきりと聞こえた。
男たちはいっせいにその方向に注目する。
わたしも目を見開き、その姿を視界にとらえた。
「……っ!」
声にならなくて、息だけが口から吐き出される。
さっき追いかけていたはずの彼――優にぃが本当にいたから。