世界で一番似ている赤色
「なんだよお前、彼氏?」
腕をつかんでいた男が優にぃに絡みだす。おかげで腕が解放された。
「綾!」
優にぃは男をかわし、わたしに手を伸ばした。
急いでその手をつかんだ。
「逃げるよ。頑張って」
そのまま彼はわたしを引っ張り走り出した。
まばらな人の流れを避けたり、追い越したりしながら、痛む足を必死に動かした。
何度か道を曲がった後、優にぃは後ろを振り返った。
男たちは追ってきていないらしい。
優にぃはスピードをゆるめ、ビルとビルの間にあった細い駐輪場に入った。
ちょうど人はいなくて、自転車もまばらにしか止まっていなかった。
しゃがみこんでぜーぜー言っていると、優にぃの冷たい声が降ってきた。
「お前、何してんの? 絡まれてんじゃねーよ。早く逃げろよ」
「だって……はぁっ……はぁ」
久しぶりの再会なのに、髪の毛はぼさぼさだし、息切れは止まらないし、優にぃは怒ってるし。
どうしようもなく胸が苦しくなる。だけど。
「……なんで追いかけてくんだよ」
心なしか彼の声は震えていて、しゃがんだまま彼を見上げた。
優にぃは怖い顔でわたしを見下ろしていた。