世界で一番似ている赤色
「ごめんなさい。だって優にぃが……っ!」
立ち上がろうとしたものの、ずきんと足が痛み、息を飲んだ。
優にぃはわたしの不自然な様子に気がついたらしい。
ダルそうにしゃがみ、ロングスカートの裾に手をかけた。
「見せて」
「やっ」
「いいから」
抵抗したものの、裾がめくられた。
ふくらはぎから膝にかけて、たくさんの赤い線が重なり合い、大きな傷になっていた。
「はぁ……」
優にぃは自分の髪の毛を乱し、視線を落とした。
その間にスカートを元に戻した。
逃げられて悲しかった。走って苦しかった。転んで痛かった。男たちに絡まれて怖かった。
だけど、そんなのはちっぽけなことに思えた。
優にぃが今、目の前にいる。
その喜びでわたしは胸がはち切れそうになっていたから。
「優にぃ……なんで?」
そう尋ねた瞬間、「ばか」と彼はつぶやき、ぎゅっとわたしを抱きしめた。
彼の腕が震えていて、わたしも彼の背中に手を回し、強く抱きしめ返した。
あったかくて、安心した。
これがわたしの大好きな、優にぃの温度だ。