世界で一番似ている赤色
制服越しに、彼の指が肩にくいこんで痛い。
でも、川瀬くんの心の痛みを考えると、抵抗ができない。
目をつぶってじっと耐える。
泣くな、泣くなと自分に言い聞かせる。
その時、後ろから、ファイオー、ファイオー、と野球少年たちのかけ声が聞こえてきた。
おらぁサボんな! とコーチらしき男性の怒鳴り声も響く。
それを合図に川瀬くんは、手を離してくれた。
まぶたを大きく開き、自分がやったことに驚いている様子で。
「……ごめん」
両手で顔を隠し、彼は弱々しく謝った。
「ううん。わたしが悪いから」
「俺、1人で舞い上がってたんだ……。バカみたい」
泣きそうな声を漏らす川瀬くん。
彼をこんなに苦しめたのはわたしだ。本当に嫌な子だ。
「綾ちゃん。最後に1つわがまま言っていい?」
ん? と顔をふせたままの川瀬くんに目をやった。
長くなった2人の影が薄くなる。住宅街の奥へと夕日が消えていく。
「キス、してくれる?」
――え?