世界で一番似ている赤色
「そしたら俺、きっぱり諦めるから」
ここで!? とテンパっているうちに、川瀬くんはわたしに顔を近づけ目をつぶった。
「え、え、え。ちょっと待って!」と慌てると、
「じゃあこのまま待ってる」
川瀬くんは目を閉じたままそう答えた。
全く動く様子はない。
なんとなく、後ろの遊歩道を見上げた。
帰宅中の小学生たちがぞろぞろ歩いている。数人がカップルだー、ラブラブだ―、などとわたしたちを指さしている。
ど、どうしよう!
そりゃ、川瀬くんの気持ちに甘えたわたしが悪い。
だけど……ここけっこう人通りあるよ? 無理だってば!
いや、待て。キス1回ですっぱりと彼との関係を終わらせることができるのか。
だったら……。
やっぱやだ! 別れる彼氏となんでキスしなきゃいけないの? しかも川瀬くんとはまだしたことないのに!
「綾ちゃん、早く。この姿勢疲れるから」
「ごめんなさい! 無理です!」
彼が目を開ける前に、わたしは手で雑草をかきわけ土手を駆け上がった。
わたしは、川瀬くんと別れることができたのだろうか。
嫌な予感に包まれながら家に帰った。