世界で一番似ている赤色







次の日、川瀬くんは一度もわたしに話しかけてこなかった。


良かった、無事別れることができたらしい。



すっきりとした別れじゃなかったけれど、



「ねー綾ちゃん、これ怖い?」


「それオバケじゃなくて白塗りモノマネみたい! あはは!」



文化祭の準備が本格化してきたし、



「綾ちゃん器用だね!」


「そんなことないよ~」



朱里ちゃんが所属している演劇部の小道具づくりにも参加して、忙しさのあまり、川瀬くんのことを考えているヒマはなかった。



学校を出た頃にはあたりは暗くなっていた。


朱里ちゃんは居残りで練習するらしく、1人で帰路についた。



お腹がすいたため、駅までの近道コースを進む。


人通りは少ない。時々自転車に追い越されるくらい。



駅の逆側へショートカットできる狭いトンネルに入った。



すぐ後ろに人の気配があった。


わたしと同じルートで駅へ向かうらしい。


2人分の足音がトンネルの両壁にぶつかり合う。



コツ、コツ、……。



突然、もう1つの足音がけたたましく響いた。

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