世界で一番似ている赤色
――え!?
急に後ろから腕が引っ張られる。
振り返ると同時に、体が引き付けられ、膝裏に衝撃が走った。
足を払われ、体がふわりと宙に浮かんだ。
「キャッ!」
そのままアスファルトに体が投げ出される。
突然の痛みと恐怖に、パニック状態になる。
薄暗いトンネル内、1つの影がわたしを包んだ。
反射的にその方向を見る。
そこには、表情のない顔でわたしを見下ろす、川瀬くんの姿があった。
「かわせ、くん……っ!」
彼はゆっくりわたしの前にしゃがむ。
目線が同じになった瞬間、ものすごいスピードで胸ぐらがつかまれた。
「なぁ、お前何ヘラヘラ笑ってんだよ。人の気持ち踏みにじっといて」
怖くて声が出ない。体だけががたがた震えている。
そのまま突き飛ばされた。勢いよくアスファルトに倒れ込む。
「覚えとけよ、このクソ女」
彼はそう言い捨て、スタスタとトンネルを抜けていった。
確かに、彼との出来事を思い出さないよう、今日1日、わたしは笑いながら学校生活を送った。
自分を振った元恋人が楽しそうにしていたら、腹が立つに決まっている。
わたしが悪い。自業自得だ。