世界で一番似ている赤色
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☆
学校の人に見つからないよう、トイレで時間を過ごしてから家とは逆行きの電車に乗った。
つけられていないか後ろを確認し、優にぃ家の最寄り駅で降りる。
コンビニで立ち読みをしていた彼は、A北の制服を着ていた。
階段を降りる。窓越しに目が合う。
緊張した面持ちで、彼はコンビニから出てきてくれた。
「嘘つき」
軽い怒りをぶつけると、彼は深いため息をついた。
でも、その表情は何かがふっきれたような、すっきりとしたものだった。
「あっちにファミレスある。行こ」
彼はそう言って、横目でわたしを促した。
人がちょこちょこあふれ出してくる駅から離れ、薄暗い道を2人で進む。
優にぃは腕まくりをしたシャツにゆるめのネクタイ、チェックのズボン。
かつて調べたことがある、A北の制服そのままだった。
県道へ続く道路は歩道が広く、中高生らしき男女に自転車で追い越される。
ファミレスにも家族連れや、学生カップルがちらほら見えた。
話し声や笑い声が響く中、わたしたちは窓際の席へと通された。
「ねぇ、知ってる人いない? 大丈夫?」
きょろきょろしてから、優にぃにこそっと聞く。
「別に誰かがいたところで、他校の女子と飯食ってるだけにしか見えないでしょ」
彼はメニューを見ながらこう続けた。
「綾ももう高校生だしね」
「…………」
わたしは、やっと彼に子ども扱いされない年齢になれたらしい。