世界で一番似ている赤色
「お待たせしましたー」
優にぃのハンバーグセットと、わたしのドリアが運ばれてきた。
セットのご飯は大盛。
だけど、心なしか彼は前より痩せた気がする。
「ねぇ、ご飯ちゃんと食べてる? どうせコンビニご飯とかで済ましてるんでしょ?」
「ま、そんな感じだね」
「じゃあ、おばあちゃん来ない日、わたしがご飯作り行くよ」
――あ。
言ってから、気がついた。
いろんな決心があって、わたしたちは離れたはずなのに。
軽々しく言っちゃいけないことを口にしてしまった。
ごめん、と言いかけた時、
「そういえば。さっき電話で泣いてたけど、何があったの?」
と優にぃは聞いてきた。
「泣いてないよ」とわたしが嘘をつくと、「なんだよそれ」と彼は吐き捨て、ナイフとフォークでハンバーグを切り出した。
わたしもドリアを一口分すくい、ふーふーと冷ます。
しばらくもくもくと食事をしていたけれど、ふと優にぃは手を止め、わたしを見つめた。
ここに来る前にメイクで目の腫れをだいぶ隠した。
でも、そんなに見つめられたらバレちゃうかも。
スプーンを置き、下を向く。
すると、彼はぼそりと「ご飯、作りに来てよ」と口にした。
「うん!」
それだけで、心がマイナスから一気にプラスへと持っていかれた。
川瀬くんを傷つけたことなんてすっかり忘れるほど。
わたしはおかしいのかもしれない。
また優にぃと会うことができる。
それだけで、他に嫌なことがあっても全然大丈夫だと思えた。