世界で一番似ている赤色







次の日、すっきりした気持ちでわたしは学校に向かっていた。



「おはよう」



電車を降りてすぐ大和くんの姿が見えたため、声をかけた。



「ん? あ、おはよ」



まわりを何度か見まわしてから、彼は挨拶を返す。


もしかしてわたしといるところを川瀬くんに見られていないか、気にしている?



「そんな警戒しなくて大丈夫だよ。わたし川瀬くんと別れたから」


「へぇっ?」



ぞろぞろと歩いている人混みに、同じ制服の人たちも混ざっている。


近くで通勤途中のサラリーマンが緊迫した空気を漂わせている中、彼は間の抜けた大声をあげた。



「怒られちゃった。人の気持ち踏みにじったって」


「へーそっか」



普通にしようと頑張ってはいるものの、彼はどこか気まずそうな雰囲気をまとっている。


川瀬くんのことよりも、もっと知りたいことがあるんだろう。



先の十字路では、うちの高校に向かう学生と会社に行くサラリーマンが別々の方向へぞろぞろ流れている。



その様子を眺めながら、大和くんは口を開いた。



「あの、この前……買い物したとき、お前が追いかけたヤツって」


「うん。優にぃだよ。あれ」


「だよな。うん、そうだよな。うん」



まさかわたしがあっさり言うとは思っていなかったのだろう。


返事をしつつも、驚きを隠しきれていない感じ。



「あはは、なんでそんな緊張してんの?」



昔、わたしをいじめて何度も優にぃに怒られていた。


そのイメージが強いのだろうか。



そう思ったけれど。



「あんなお前が必死になってるの、初めて見たから」


「まあ、久しぶりだったからね」


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