世界で一番似ている赤色
☆
次の日、すっきりした気持ちでわたしは学校に向かっていた。
「おはよう」
電車を降りてすぐ大和くんの姿が見えたため、声をかけた。
「ん? あ、おはよ」
まわりを何度か見まわしてから、彼は挨拶を返す。
もしかしてわたしといるところを川瀬くんに見られていないか、気にしている?
「そんな警戒しなくて大丈夫だよ。わたし川瀬くんと別れたから」
「へぇっ?」
ぞろぞろと歩いている人混みに、同じ制服の人たちも混ざっている。
近くで通勤途中のサラリーマンが緊迫した空気を漂わせている中、彼は間の抜けた大声をあげた。
「怒られちゃった。人の気持ち踏みにじったって」
「へーそっか」
普通にしようと頑張ってはいるものの、彼はどこか気まずそうな雰囲気をまとっている。
川瀬くんのことよりも、もっと知りたいことがあるんだろう。
先の十字路では、うちの高校に向かう学生と会社に行くサラリーマンが別々の方向へぞろぞろ流れている。
その様子を眺めながら、大和くんは口を開いた。
「あの、この前……買い物したとき、お前が追いかけたヤツって」
「うん。優にぃだよ。あれ」
「だよな。うん、そうだよな。うん」
まさかわたしがあっさり言うとは思っていなかったのだろう。
返事をしつつも、驚きを隠しきれていない感じ。
「あはは、なんでそんな緊張してんの?」
昔、わたしをいじめて何度も優にぃに怒られていた。
そのイメージが強いのだろうか。
そう思ったけれど。
「あんなお前が必死になってるの、初めて見たから」
「まあ、久しぶりだったからね」