世界で一番似ている赤色







優にぃのバイト休みの土曜日。わたしは彼の家にいた。



普段は学校終わりに地元のスーパーでバイトをしているらしい。


お父さんからは進学を勧められているものの、進路はまだ迷っているとのこと。



わたしは学年で上位の成績を保っていて、このままいけば有名大学に行けるんじゃないかって言われている。


お母さんもあの大学は? この大学は? といろいろ勧めてくる。


だけど、先のことなんて今は分からない。


とりあえずは目の前のことをこなして、自分の道を見つけるしかない。



久しぶりに来た優にぃの家は、おばあちゃんのおかげか意外と綺麗だった。


冷蔵庫には作りおきの酢の物やおひたしも入っていた。



お父さんも時々帰ってくるらしく、木彫りのカラフルな猫ちゃんが数体、テレビの横に置かれていた。



「はい、お待たせ」


「美味そう~。いただきまーす」



日持ちするものがいいかと思い、肉じゃがを作った。


優にぃはぺろりとたいらげ、おかわりもしてくれた。



洗い物を終え、リビングに戻る。


座ってテレビを見ていた優にぃは、ありがとう、と笑顔を向けてくれた。



テレビでは食べ歩きの番組が流れていて、芸人さんが美味しそうにシュークリームをほおばっている。



「綾、どっか出かける?」



そう声をかけられたため、


「ううん。ここがいい」


と答え、優にぃの隣にぴょんと座った。



急に距離を詰められたことに驚いたのか、彼は「近い」と言って、視線をそらした。

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