世界で一番似ている赤色


「どーしたの? 照れてる?」



負けずに彼の二の腕をつかみ、顔を近づける。


彼はわたしを見ないまま、髪の毛をぐしゃりと撫でてきた。



「そういうかわいいことしないで」


「かわいい? わたしが?」


「うん」



かわいいって言われて、1人舞い上がるわたし。


自然とテンションと口角があがってしまい、彼の腕に自分の腕をからめた。



しかし、優にぃは、「綾」と低い声でわたしを止めた。


しゅんと心が沈む。


静かに彼から離れ、一歩離れた場所に座り直した。



まだ再会してから、わたしは優にぃと向き合えていない。


今、その時がきたと悟った。



彼も姿勢を直し、わたしと正面から目を合わせた。



「俺がどんな気持ちで海外行くって嘘ついたか分かる?」



一気に緊張感が走り、わたしは言葉を返せなかった。


優にぃはそのまま続けた。



「綾の高校や家の近くの路線は絶対使わなかったし、練習試合でいろんな高校行くから、家の都合って言って部活も辞めた」


「うそ……」


「俺にとってはそれくらいの決心だったこと、知ってほしい」



そう言って、真剣なまなざしをわたしへ向けた。

< 153 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop