世界で一番似ている赤色
「どーしたの? 照れてる?」
負けずに彼の二の腕をつかみ、顔を近づける。
彼はわたしを見ないまま、髪の毛をぐしゃりと撫でてきた。
「そういうかわいいことしないで」
「かわいい? わたしが?」
「うん」
かわいいって言われて、1人舞い上がるわたし。
自然とテンションと口角があがってしまい、彼の腕に自分の腕をからめた。
しかし、優にぃは、「綾」と低い声でわたしを止めた。
しゅんと心が沈む。
静かに彼から離れ、一歩離れた場所に座り直した。
まだ再会してから、わたしは優にぃと向き合えていない。
今、その時がきたと悟った。
彼も姿勢を直し、わたしと正面から目を合わせた。
「俺がどんな気持ちで海外行くって嘘ついたか分かる?」
一気に緊張感が走り、わたしは言葉を返せなかった。
優にぃはそのまま続けた。
「綾の高校や家の近くの路線は絶対使わなかったし、練習試合でいろんな高校行くから、家の都合って言って部活も辞めた」
「うそ……」
「俺にとってはそれくらいの決心だったこと、知ってほしい」
そう言って、真剣なまなざしをわたしへ向けた。