世界で一番似ている赤色
彼の事実にショックを受けた。
あんなにバスケ好きだったのに、辞めてしまったんだ。
わたしは表情を作れず、ただ彼と目をあわせることしかできなかった。
「じゃあ、会わない方が良かった?」
声が震える。目の奥がきゅっと痛む。
「うん。そうだと思う。普通は」
「…………」
――普通って何?
「でも、俺、おかしいわ」
――だったら、わたしもおかしいよ。
「お前は……俺の妹なのに……」
――優にぃは、わたしのお兄ちゃんなのに……。
彼はかすれた声で、想いを吐き出した。
片手で髪の毛をぐしゃりと握り、苦しさに耐えている。
この前、街で偶然見つけて追いかけた。
あのまま逃げ切ればよかったのに、変な若者にからまれたわたしを助けてくれた。
『俺だって会いたかったに決まってんじゃん』
わたしを抱きしめ、辛そうな声でそうぶちまけた優にぃ。
彼もまたわたしへの気持ちを無くそうと必死になっていたんだ。
「優」
名前を呼ぶ。
ゆっくり彼は顔を上げる。うつろな目を私に向ける。
こんなのおかしい。
ただ、お互いを想っているだけなのに。
どうしてこんなに苦しまなきゃいけないの?
「好きだよ」