世界で一番似ている赤色
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☆
文化祭が終わり、疲れが押し寄せたのか風邪をひいてしまった。
お母さんに連絡してもらい、高校を休むことにした。
昼寝して起きると、すでに部屋は真っ暗になっていた。
「綾、大丈夫?」
ドアがノックされ、体を起こす。お母さんが部屋に入ってきた。
仕事から返ってきたばかりらしく、スーツ姿のままで。
「ん、だいぶ熱下がった」
「そう。さっき川瀬くんが課題プリント届けに来てくれたよ」
「え」
「上がってって言ったんだけど、断られちゃった。綾とは別れたから……って言って」
ぶるっと寒気がした。
わたし家の場所教えてないのに、どうして川瀬くんが……?
しかも別れたことお母さんに言わないでよ。
「ほんといい子なのに、どうして別れちゃったのよ~」
「まあ、いろいろあって」
「悩みとかあったら何でも言いなさいよ。あんた急におかしくなる時あるでしょ?」
お母さんは腕組みをして、わたしへと近づいてきた。
疑わしそうな目でわたしを見下ろした。
「この家族の中で、一番綾のこと分かってるのはお母さんなんだから」
「…………」
分かってる。本当に? わたしのことを。
わたしの本心を全く分かっていないくせに。
向き合おうとしてくれないくせに。
まあ、そう言ってくれる気持ちは嬉しいけどさ。
気持ちがもやもやしてきたため、ご飯まで少し寝る、と言って、わたしは逆側に寝返りを打った。