世界で一番似ている赤色
☆
「うわー寒いねー!」
風邪はすっかり治り、今日は遠出して海が見える街に来た。
スニーカーのまま砂浜を駆ける。
遠くではサーファーたちがゆらゆら波に揺れたり、ボードに乗ったりしていた。
「ふわぁ~」
電車で爆睡していた優にぃは、伸びをしながらの大きなあくび中。
この隙に攻撃だ!
「ていっ!」
「おっと!」
体当たりしようとしたが、ひょいとかわされた。くそう。
そのまま優にぃは「綾、遅い遅い!」と言って、広い砂浜を走り出した。
「待ってよ~」
わたしも必死になって彼を追いかける。
ひんやりした空気が頬に当たって気持ちがいい。
しかし、なかなか距離は縮まらない。
「へいへいへい」
彼は待ってくれたかとおもいきや、変な挑発をしてきて。
「追いつい……たぁっ!?」
ダッシュで捕まえようとしたものの、フェイントをかけられ、すっと横に逃げられた。
「ぜぇ、ぜぇ、もう、無理~」
疲れて砂浜にぱたんと座り込む。
笑いながら優にぃは戻ってきて、ペットボトルのお茶をわたしに差し出した。