世界で一番似ている赤色
しばらく砂浜に座り、2人で海を眺めた。
「相変わらずすばしっこいね。全然追いつけない」
「綾が運動できないだけ」
「ねぇ、わたしがいなかったら、バスケ続けてたの?」
細い枝で砂を掘りながら、優にぃに尋ねた。
サーファーの家族らしき子どもたちが、さっきのわたしたちのように砂浜を走り回っている。あれ、兄妹かな?
「ううん。本当はバスケ辞めたのは半分自分のせい。綾のせいにしてゴメン」
肩に重みが加わる。髪の毛に頬を撫でられる。
甘えるように、優にぃはわたしの肩に頭をのせてきた。
「バスケ続けてもそれで飯が食えるようになるわけじゃないし。父さんもいなくなって、綾とも会わなくなって、プチ堕落してた」
波の音はボリュームが大きいのに、わたしたちを優しく包んでくれるかのよう。
優にぃの声は憂いを帯びている。
ぎゅっと抱きしめたくなった。
「堕落って……あ! それで女に逃げたってこと? もしかして彼女いっぱい作ってたり?」
「いっぱいは作ってないよ」
肩を上下に揺らし、ごすごすと彼の頭に攻撃をする。
いてっ、と言い、彼は体勢を直した。
「作ってはいたもんね」
頬をぷーっと膨らませたが、
「この話、終わり」
両手で頬を挟まれ、空気がぷしゅーっと抜けた。