世界で一番似ている赤色
「まだ帰りたくない」
「だめ。家族が心配するでしょ」
「まあね……」
「またご飯作りに来て」
「うん!」
ドアが開く。ぴょんと飛び降り、笑顔で手を振った。
ドアが閉まる。窓越しに優にぃも手をあげる。口がかすかに動く。
『好きだよ』
『わたしも好き』
口パクで伝えあってから、ぶんぶんと手を振った。
電車ががたんがたんと通り過ぎていく。
1人ニヤニヤしながら、改札に行こうとした。その時だった。
「お姉ちゃん……?」
後ろから声をかけられた。
振り返ると、私服姿の澄花ちゃんがいた。
「あ、澄花ちゃん。今帰り? どこ遊び行ってたの?」
優にぃとバイバイし合ってたの、見られていた?
でも、男子とデートすることくらい普通のことだ。大丈夫だ。
「さっきの男の人、澄花知ってる」
「そう? 彼、バスケ上手いし有名なのかなぁ」
「去年も1回お姉ちゃんとデートしてるの見た」
――あ!
体に緊張感が走った。
そうだ。1回、手をつないでいるのを見られて、お母さんにチクられたことあった。