世界で一番似ている赤色
なぜか澄花ちゃんは泣きそうな顔になっている。
どうしたの、帰ろう? と促しても、首を振ってその場から動こうとしない。
「あの人、お母さんとお姉ちゃんの昔の家族でしょ? どうしてお姉ちゃん、まだ会ってるの?」
「え。何言ってるの?」
「だって、お母さんの部屋に写真があった」
ああ、どうしてこの子は家族のことに敏感なんだろう。
勝手に人の物、見たらダメでしょ。
「お姉ちゃんの嘘つき! 澄花を悲しませるようなことしない、って昔言ってくれたのに。だから誰といたかはお母さんに内緒にしたのに!」
そうか、知っていたのか。この子は。
知っていて、ずっと黙っててくれていたんだ。
きっと、澄花ちゃんにとってわたしは、昔の兄に会いにいく妹。
いつかわたしが家族を捨てて、兄と父のもとへ行くんじゃないかと心配しているのだろうか。
正直、この子、めんどくさいな。
「澄花ちゃん」
ぐっと彼女の頭を片手でつかみ、引き寄せた。
「家族壊したくなかったら、黙ってて。いい?」
今までの人生でこんなに人をにらみつけたことはなかった。
自分でもびっくりするくらいの低い声も出た。
わたしのおどしに恐怖を感じたのか、
「はい……」と彼女は震えた声を出した。