世界で一番似ている赤色







「綾、最近澄花が元気ないのよ。心当たりない?」


「あー、なんかボランティア活動が大変って言ってたよ」



澄花ちゃん……どうして分かりやすい態度とるのかな。


もっと大人になってよ。



「成績も伸び悩んでるみたいだし、家庭教師でもつけようかなって」


「へぇ、いいんじゃない?」


「本当は、川瀬くんにお願いしてたんだけど。だって彼、学年トップなんでしょ? でも綾と別れたっていうからナシになっちゃった」



は? 何を言っているの、お母さん。



「さすがに元カレには家に来てほしくないな。じゃあいってきます」



嫌な感じがする。


わたしは優にぃと一緒にいたい。誰にも邪魔はされたくない。



なのに。どうして上手くいかないのだろう。


どうして、他人のくせに介入してきたがるのだろう。



冬が近づいてきたある朝、教室に入るといっせいにわたしに注目が集まった。


綾ちゃん……、とクラスメイトが気まずそうにある方向を見た。



わたしも同じ方向にゆっくり視線を移す。



――え。なに? これ……。



『梅川 綾は、実の兄と付き合っているヘンタイ女!』



黒板には、そう乱暴に書きなぐられていて。


文字の周りには、プリントアウトされた写真らしき紙が数枚貼られていた。

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