世界で一番似ている赤色
☆
「綾、最近澄花が元気ないのよ。心当たりない?」
「あー、なんかボランティア活動が大変って言ってたよ」
澄花ちゃん……どうして分かりやすい態度とるのかな。
もっと大人になってよ。
「成績も伸び悩んでるみたいだし、家庭教師でもつけようかなって」
「へぇ、いいんじゃない?」
「本当は、川瀬くんにお願いしてたんだけど。だって彼、学年トップなんでしょ? でも綾と別れたっていうからナシになっちゃった」
は? 何を言っているの、お母さん。
「さすがに元カレには家に来てほしくないな。じゃあいってきます」
嫌な感じがする。
わたしは優にぃと一緒にいたい。誰にも邪魔はされたくない。
なのに。どうして上手くいかないのだろう。
どうして、他人のくせに介入してきたがるのだろう。
冬が近づいてきたある朝、教室に入るといっせいにわたしに注目が集まった。
綾ちゃん……、とクラスメイトが気まずそうにある方向を見た。
わたしも同じ方向にゆっくり視線を移す。
――え。なに? これ……。
『梅川 綾は、実の兄と付き合っているヘンタイ女!』
黒板には、そう乱暴に書きなぐられていて。
文字の周りには、プリントアウトされた写真らしき紙が数枚貼られていた。