世界で一番似ている赤色
2
「綾ちゃん!」
体育の授業にて。クラスメイトからパスが回された。
しかし――
「うわっ!」
慣れない、大きなバスケットボール。
それは、勢いよくわたしの手のひらではじけ、床へと転がった。
すかさず相手チームの人に拾われ、逆側へのゴールを決められてしまう。
「ごめん! ごめんね……」
せっかくパスをくれたのに、応えることができなかった。
謝ることしかできなくて、悲しかった。
「はぁ……」
自分のチームの試合が終わり、1人体育館の隅に向かった。
壁に背中をつけて、バスケ風景を眺める。
体育館は2つに区切られ、奥では男子たちが試合中。
大和くんがシュートを決めると、女子たちからキャーキャーと高い声があがった。
彼はサッカー部なのにバスケも得意らしい。
でも、大和くんはじめ上手い人は結構いるけれど、きっと優にぃにはかなわない。
なんてことを思っていると、集合の笛が鳴らされた。
列を作る女子たちへ近づいた時だった。
「危ない!」
誰かの大声が聞こえ、はっと後ろを振り返った。
と同時に、肩に激しい衝撃が走った。