世界で一番似ている赤色
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わたしだけじゃなくて、優にぃも緊張しているみたいだった。
学校帰り、優の最寄り駅にあるファミレスへ。
もうすぐここにお母さんも来るらしい。
お母さんと優にぃが会うのは、きっと離婚して以来、5年くらいぶり。
夕食の時間のため、まわりのテーブルには家族連れの姿が多い。
優にぃは今のうち飯食っとこ、と言って、メニューを眺めた。
「綾は? なんか頼む?」
「わたしはいいや。全然食欲ない」
「そっか。俺は逆に何かしてないと落ち着かない」
「怖い?」
「ちょっとは。でも、いつかはこの時がくる覚悟はしてたから」
彼の言葉に「うん」と返した時、カツカツとヒールの音が近づいてきた。
仕事帰りのスーツ姿。お母さんが来た。
「久しぶりっすね」
表情を変えないまま、上目でお母さんに挨拶する優にぃ。
お母さんは彼を無視して、わたしの隣に座った。
「綾。どういうことか言いなさい」
お母さんからの静かな怒りが伝わってくる。
優のことが好きと伝えたところで、絶対に許されないのがオチだ。
そりゃそうだ。
わたしたちはお母さんから生まれた子ども。
自分の子ども同士が恋をするなんて、お母さんにとってものすごく異常なことだ。