世界で一番似ている赤色
「優……優にぃとは時々会ってる」
「はぁ……」
「進路の相談したり、ご飯食べたり、遊びに行ったり」
――バァン!
お母さんはテーブルに拳を叩きつけた。
水の入ったコップが3つ、がたがたっと揺れた。
「そういうことを聞いてるんじゃない。証拠はあがってんのよ」
お母さんはスマホをいじり出す。
わたしと優にぃの写真が、お母さんにも送られたのだろう。
きっと犯人は川瀬くんだ。なぜかお母さんとつながりを持っているから。
優にぃはメニューを置き、テーブル端にあるボタンを押した。
ポーン、と店内に音が響き、店員さんが近づいてきた。
「変わんないっすね。そうやって自分の意見ばっか押し付けるとこ」
彼はそうつぶやいてから、店員さんにハンバーグセットを注文する。
視線をよこされ、わたしも慌ててミートドリアを注文した。
優にぃは、「なんか頼みます?」とお母さんにも聞いたものの、お母さんはやっぱり無視。
とりあえず以上です、と伝える。
店員さんは注文を繰り返した後、去っていった。
お母さんは隣で頭を抱えている。
どうしてこんなことになったのよ……とかすれた声でつぶやく。
鼻水をすする音がした。その間隔は次第に狭まる。
お母さんは泣いていた。
ドラマみたい。そう思った。
「お母さん」
肩を震わせるお母さんに触れようとしたが。
「さわんないで!」と手を払われる。
まるで汚いものを目の前にしているかのよう。
「なんなのよ……っ、こんなんじゃ……世間様に、どう顔向けしたらいいか、うっ……なんて恥ずかしい子なの……」
そうこぼし、お母さんは両手で頭を抱え込んだ。
わたしはその発言に違和感を覚えた。