世界で一番似ている赤色
お母さんからの言葉は重かった。
お金の援助はしない。
このことは日々のご飯、高校生活、おこづかい、全てが奪われることを表している。
今、わたしは家族に養われている身で、1人にされたら生きていけない。
その言葉を頭で繰り返すと、食欲が一気に失せた。
「綾……叩かれたとこ、大丈夫?」
「全然平気。大丈夫」
「俺ら、しばらく会わない方がいいかも」
「え……どうして?」
向かい側にいる彼を見上げる。
彼は何かを考え込んでいるような、辛そうな顔をしていた。
「まだ俺は学生で、経済的に自立できていない。綾は大学に行く頭もある。綾の将来を奪うことはできない」
かすれた声でそう言い、ぐしゃぐしゃと自分の髪をつかんだ。
わたしの前ではそんなそぶりを見せない。
だけど、優にぃはわたしが思っていたほど強くない。
優にぃを苦しめてきた、お母さんの「必要ない」発言をわたしは絶対に許さない。
さっき全く彼を見なかったことに対しても、わたしは怒っている。
「俺、就職はするけど、給料だって入社してからはそんなに高くない。あの人……痛いとこついてきた、悔しい」
「優」
きっと、お母さんは優にぃと向き合えなかったんだ。
自分がかつて愛して、そして上手くいかなくなったお父さんと似ている優にぃと。
「わたしたちのつながりは、誰にも消せない。そうでしょ?」
「綾……?」
「わたしは優がいれば、大丈夫だから」
子ども扱いばかりさせてたまるか。
守られてばかりなのももう終わりだ。
わたしは正常だ。
おかしいのはわたしたちの想いを勝手にナシと判断する世間の方だ。
何も知らないからこそ、何でも言えるだけ。
そんな声は無視したらいい。
兄妹が結婚できないという法律はある。
だけど、恋愛はダメとは決められていない。
親が悲しむとか、将来がないとか、そんなのは理由じゃなくて、考え方のひとつに過ぎない。