世界で一番似ている赤色
「どうせわたしはキモいよ! でも、まわりがどうこう思う以上に、当事者のこっちの方がもっと考えてるに決まってるでしょ? 何にも知らないくせに、本当しつこい!」
胸ぐらをつかまれたけれど、負けずに言葉を続けた。
引き下がれなくなったのか、わたしの勢いに押されたのか。
川瀬くんは怒りの行き場をなくしたらしく、吐き捨てるように言った。
「そんな意味のない恋愛して、頭おかしいんじゃねーの?」って。
その時、机がけたたましく音を上げた。
川瀬くんはビビったようで、つかまれていた制服がぱっと外れた。
すぐ近くの机がいくつか床に倒れている。
大和くんが、川瀬くんの机を蹴とばしたらしい。
「おい……もういいだろ。綾も言いすぎ」
そう言った後、川瀬くんの胸ぐらをつかみ、
「意味があるかないかはお前が決めることじゃねーよ。しかも、誰だって他人に知られたくない秘密くらいあるだろ? それバラすとか、お前本当最低だな」
と言い捨て、彼を解放した。
床に倒れ込んだ川瀬くん。ざわつくクラスメイトたち。
教室は異様な空気に包まれた。
川瀬のやつ最低じゃね? 綾ちゃんがかわいそう、などという声も聞こえる。
「言っとくけど、これ以上、綾になんかしたら、俺が許さないから」
最後に大和くんがそう言うと、
ぱち、ぱち、ぱち……。まばらな拍手が教室で起きた。