世界で一番似ている赤色
「じゃあ、顔は?」
「あんま似てない。綾かわいいもん。顔面がって言うより全体的に」
「なにそれ。どうせ優はイケメンだもんね! 本当にうちら兄妹? って感じ」
わたしも冗談ぽくそう答えた。
しかし、彼は座ったまま、まっすぐわたしを見つめた。
「俺と綾は今はもう苗字が違うし、家族じゃない。恋人だ。
でも、血の繋がった兄妹っていう事実は消せない。だから、結婚はできない」
それは、わたしたちではどうにもできないこと。
「このこと……綾はどう思ってる?」
そう言われ、わたしははっと思い出した。
小学生の頃の宿題で書いた作文のことを。
優にぃにのぞき見されそうになって、必死に抵抗したことを。
「んー今は結婚とか全然考えてないからなぁ。まだ高校生だよ? わたし」
「そっか」
「優は早く結婚したいの?」
「ごめん、俺もあんま考えてない。でも、綾とずっと一緒にいれたらいいって思う」
「えへへ。わたしも」
兄妹だからこそできないことはある。
それらを受け入れながら、わたしたちは生きていかなければならない。
「……ん。こら」
ほっぺにキスされた。ドキッと鼓動が高鳴る。
離れた瞬間、彼の口が動いた。"ごめんね"って。
首を横に振ると、ぎゅっと抱きしめられた。
謝らなくていいのに。わたしは今の幸せを大事にしたいから。