世界で一番似ている赤色
☆
カレーライスを3人分盛り付けして、テーブルに置く。
同時に、「ただいまー」という声が聞こえてきた。
ガラガラとトランクを引く音が近づいてくる。
「おかえり」
「……おかえりなさい」
わたしと優にぃがリビングに座っていて、3人分のカレーが置かれている光景。
「お、……あ、ああ」
お父さんは驚いて固まっていた。
「とりあえず、飯食べよ。綾が作ってくれた」
優にぃがそう促し、気まずそうにお父さんもカレーの前に座った。
いただきます、と3人で食をスタート。
「どう?」お父さんに聞くと、「うん、おいしい」と答えた。
「これ、わたしだけじゃなくて優にぃと2人で作ったんだよ」
「や、その……2年前くらいだっけ。綾ちゃんがここ遊びに来た時、なんかおかしいって思ってたんだ」
お腹が空いていたのか、今の状況にたえられないのか、お父さんはぱくぱくカレーを口にする。
あっという間に皿は空っぽになった。
「そりゃ、信じられない。嘘であってほしい」
お父さんは悲しそうにそう言い、がくりとテーブルにうなだれた。
「あの人……母さんに何言われたか知らないけど、俺は綾を大切に思ってるよ」
たぶん殴られるのを覚悟で、優にぃはそう言ったんだろう。
なのに、お父さんは拳を震わせながら、必死に耐えている様子。
「兄として、たった1人の妹を見守ってる。これが事実」
「優にぃは血のつながったたった1人のお兄ちゃんだから。だから、心配で時々ご飯作りに来てる。だって優にぃは昔っから家事しなかったじゃん。お父さんと似てて」
わたしも彼の言葉に続けた。
「はぇ?」
前よりも日に焼けて髭も生えたお父さんは、パッと顔を上げた。
ちょっと嫌味も混ぜておいたけれど、そんなの気にしていないみたい。