世界で一番似ている赤色







カレーライスを3人分盛り付けして、テーブルに置く。


同時に、「ただいまー」という声が聞こえてきた。


ガラガラとトランクを引く音が近づいてくる。



「おかえり」


「……おかえりなさい」



わたしと優にぃがリビングに座っていて、3人分のカレーが置かれている光景。



「お、……あ、ああ」



お父さんは驚いて固まっていた。



「とりあえず、飯食べよ。綾が作ってくれた」



優にぃがそう促し、気まずそうにお父さんもカレーの前に座った。


いただきます、と3人で食をスタート。



「どう?」お父さんに聞くと、「うん、おいしい」と答えた。



「これ、わたしだけじゃなくて優にぃと2人で作ったんだよ」


「や、その……2年前くらいだっけ。綾ちゃんがここ遊びに来た時、なんかおかしいって思ってたんだ」



お腹が空いていたのか、今の状況にたえられないのか、お父さんはぱくぱくカレーを口にする。


あっという間に皿は空っぽになった。



「そりゃ、信じられない。嘘であってほしい」



お父さんは悲しそうにそう言い、がくりとテーブルにうなだれた。



「あの人……母さんに何言われたか知らないけど、俺は綾を大切に思ってるよ」



たぶん殴られるのを覚悟で、優にぃはそう言ったんだろう。


なのに、お父さんは拳を震わせながら、必死に耐えている様子。



「兄として、たった1人の妹を見守ってる。これが事実」


「優にぃは血のつながったたった1人のお兄ちゃんだから。だから、心配で時々ご飯作りに来てる。だって優にぃは昔っから家事しなかったじゃん。お父さんと似てて」



わたしも彼の言葉に続けた。



「はぇ?」



前よりも日に焼けて髭も生えたお父さんは、パッと顔を上げた。


ちょっと嫌味も混ぜておいたけれど、そんなの気にしていないみたい。


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