世界で一番似ている赤色
「わたしたち、やましいことはしてないよ? たまに昔、仲のいい兄妹だったことを思い出して、手つなぐくらいはしてるけど」
おかわりいる? と聞くと、あ……じゃあお願い、とお父さんは気まずそうに言った。
「お母さん人の話聞かないで、突っ走るとこあるじゃん。わたしたちのこと変に誤解してたみたい。もう本当びっくりしたよ!」
大盛りのご飯にカレーをどくどくかけながら、わたしは笑った。
「あれ。そういえば父さん、お土産は? 綾も今日来てるって知ってたんでしょ?」
「あ、うわ。忘れてた……。よかったらあそこにある木彫りの猫持ってっていいよ」
「やったー! あれなんていうの? 名物?」
わいわいと騒ぎながら、3人で食卓を囲んだ。
お父さんは時々首を傾げ、ぼりぼり頭をかきながらも、2回もおかわりしてくれた。
これでいいんだ。
胸はちくりと痛むけれど、あえて家族を悲しませる事実を伝える必要はない。
事実はわたしたちの中だけにあればいい。
「あーお腹いっぱい。そうだ綾ちゃん、洗い物お願いしていいかな?」
「はーい! まかせて!」