世界で一番似ている赤色
外へ出ると、白い息がぶわっと口から吐き出された。
冷たい空気に体が包まれていく。
「綾。手、つなご」
「うん」
街灯や家からの明かりをたよりに、2人で駅への道を歩いた。
手のひらが温かい。彼の温度はわたしの心をあったかくさせた。
このまま2人で違う世界へと行けたら楽なのに。
「わたし、優と旅行したいなぁ」
「どうしたの、突然」
「誰にも何にも邪魔されないとこで、優と2人になりたい」
そう伝えると、すっと手が離れた。
優にぃは立ち止まったかと思えば、うずくまるようにしゃがみこんだ。
「どしたの?」
「なんでもない」
わたしもしゃがみ、彼と目線を同じにした。
「なんでもねーよ」
彼は両手で顔をおおった。
肩を震わせながら、泣いていた。
「わたしがいるよ。優のそばに」
手を伸ばし、頭を撫でた。
そのまま両手で彼を包み込んだ。
鼓動が早まる。彼もまたわたしにぎゅっと抱きついてきた。
「ありがとう。こうしてると安心する」
「わたしも」
「俺、綾がいれば、何でも大丈夫な気がする」
うん、わたしも大丈夫だ。
今のこの胸のときめきは確かなものだ。
誰が何を言おうと、このときめきが続く限り、わたしはこの恋を貫いてみせる。