世界で一番似ている赤色
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家には入らず、駐車場前でお母さんが帰ってくるのを待った。
しばらくすると車のエンジン音と光が近づいてきた。
「お母さん、おかえり」
車から降りてきたお母さんに笑顔と言葉を投げかけた。
「綾……」
「お母さん。もう安心して。優にぃともう二度と会わないことにしたから」
何かを言われる前に、先手を打った。
「……な、なによ、そんなの信じれるわけないじゃない」
突然の問題解決に驚いたんだろう。
お母さんは片手を頭に当て、困った顔をした。
きっと、わたしとどう接したらいいかわからないんだ。
お母さんも心は強くない。
プライド高くて頑固でヒステリックで不器用で。
本気で自分の家族と向き合えない臆病者。
わたしはそんなお母さんの子どもだ。何年一緒にいると思っている。
「なんか幻想だったみたい。自分のお兄ちゃんだって改めて思ったらわたし何してたんだろうって我に返った感じ。だって、お母さんがあんなに反対するんだもん」
泣きながら「さわんないで!」と叫んだお母さんがフラッシュバックする。
「わたしはお母さんの娘だから。お母さんに感謝しているから。裏切ったりしないから」
そのままお母さんの手を引き、玄関のドアを開けた。