世界で一番似ている赤色
「ただいまー。お父さんもう帰ってたんだ。澄花ちゃんは?」
複雑な表情をしているお母さんと2人、リビングに入る。
食卓には豊さんだけがいた。
「おっ、2人一緒か。おかえり」とわたしたちを迎えてくれた後、
「澄花ー、母さんとお姉ちゃん帰ってきたよー」と2階に向かって声をかけた。
いつも通り4人の家族で食卓を囲む。
テストのこと、部活のこと、テレビのこと、友達のこと。
どこかぎこちない空気が流れているものの、明るい話題を3人に振って夜ご飯を楽しんだ。
「そうだ、わたしやっぱり家族旅行無理っぽい。今度、演劇部の大会があって、土日も手伝いに入ることなったし」
一足早くご飯を食べ終わったわたし。
流しに食器を下げる途中、3人にそう声をかけた。
「そうだ。わたし、アルバイトしていい? 成績は絶対落とさないから。演劇部の友達に学童のバイト紹介されて、やってみたいな~って」
家族だけど、豊さんはお父さんじゃない。澄花ちゃんも他人。
お母さんは唯一血がつながっているけれど、もう本気でぶつかる気はないし、泣かせることもしない。
わたしは優がいれば、それでいい。
優にぃと一緒に入れるんだったら、それ以外のことはどうでもいい。
嘘をついた罪を背負ってでも、わたしは彼と一緒にいることを選んだから。
『早く優に会いたい! 次いつ会える?』
『今日会ったばっかじゃん笑。来週末はバイトないからOK』
『この前海行ったし、次は山登りかなぁ』
『綾そんな体力ないでしょ。俺ハイキングコース調べてみるわ』
えへへ、と自然と笑顔になり、スマホ片手にベッドに転がった。
早速、冬オススメのデートコースを検索……
おっと早速いいとこ発見!
『わたしスノボやってみたい!』
『いいよ。雪降ったらね』
『やった! 滑り方教えてね』
『いいけど、綾、転んで雪だるまになりそう』
む~っ!