世界で一番似ている赤色
「さっきの人、知り合い?」
混んでいる車内で、優にぃに尋ねてみた。
「うん、同じクラス」
「そっか。結構かわいかったね。女の子の方」
「まあね」
ガタン、ガタン、と一定のリズムで電車が揺れる。
優にぃは吊り革を握り、窓の外を眺めていた。
「ねー優にぃは彼女いるの?」
「いないよ」
「うっそ、優にぃモテそうなのに」
「いたけど別れた」
「え、なんで?」
「俺じゃなくてもいい気がしたから。その子、別れた後すぐ他の男と付き合ったし」
わたしの質問に、冷めたような表情で淡々と答える優にぃ。
ちょっと様子がおかしい気がした。
あ。もしかしてさっきホームにいた2人って……。
そう気づいた時、電車は橋にさしかかり、足元が大きく揺れた。
おっと、と体のバランスをくずしそうになり、優にぃに腕を引っ張られる。
その力強さにびっくりして、はっと彼を見上げた。すると。
「って。綾にはこういう話、まだ早いか」
優にぃはバカにしたような表情をわたしに向けた。
む~!