世界で一番似ている赤色
「うん、いいけど」
そう伝えると、お母さんはほっとした表情になり、
「美味しいもの食べようと思うけど、綾は何がいい?」
と言って、食事を再開した。
お母さんは、洋食と和食どっちがいいかな~、ビュッフェもいいよね~、などと楽しそうにしている。
普段とは違うお母さんの様子により、何となく分かってしまった。
それはうすうすと予感していたことだ。
ここ2~3ヶ月の間に、お母さんは夜中近くに帰ってくることが増えた。
毎日作ってくれていたご飯も、週2、3回に減っていた。
わたしは、お母さんの変化に気づかないふりをしていた。
そのうちに物事は進んでいたんだ。
「お母さん。それ、他にも誰か来るの?」
思い切ってそう聞くと、お母さんは驚いた表情になった後、じっとわたしを見つめてきた。
そして、深くうなずいてからこう言った。
「綾に会わせたい人がいるの」
――やっぱり、そういうことか。